仮説より情熱と対話

「お手盛りの仮説」は自信のなさの防具

マーケティングの配信メールやランディングページ、ネット上の営業ノウハウを見渡せば、仮説を強要するかのように耳触りの良い言葉が躍っています。そして、多くの営業担当者が仮説という言葉のもとに提案を考え、初回商談から「御社の課題はこれです」とプレゼンテーションを展開します。そして、思考が停止している顧客に限って、その行為や提案内容を賞賛します。しかし、このようなプロセスから、企業の非連続的な成長に貢献するような全社プロジェクトや大型受注が創出できるでしょうか?(※仮説に無防備に頷く思考停止の顧客については『仮説思考の提案マニア』をご覧ください)

少しネットを検索し、決算説明資料や業界レポートを斜め読みすれば作れるような仮説。それはお客さんのためではなく、「自分が恥をかきたくない」「無知だと思われたくない」という売り手側の自己防衛(防具)にすぎません。議論の範囲を限定するためのエクスキューズでもあります。自ら事業を動かし、社内を変革しようとしている真のキーマンは、ちょっと調べれば分かるお手盛りの仮説は求めていません。つまり、顧客に伝えるべきは小手先の仮説ではない。あなた自身や顧客の未来に対する深い想いではないでしょうか?

知見・技術力と体制が重要

商談は、あらかじめ用意してきた正解を披露する「答え合わせ」の場ではありません。顧客自身すらまだ言語化できていない課題を、顧客との対話を通じてあぶり出す行為です。「なぜ、いまその事業に踏み出すのか」「何がボトルネックとなって現場を阻んでいるのか」「どこに組織の浮沈を賭けているのか」。胸襟を開き、互いの熱量をぶつけ合う密度の高い対話の場において、机上で作られたお手盛りの仮説はむしろ創造力を阻む要因にすらなります。顧客の深奥にある熱源に触れ共感し、ビジネスが始まっていきます。

ただし、勘違いしてはならないのは、「手ぶらで対話の場に飛び込むこと」と「無策で臨むこと」は全くの別物ということです。防具を脱ぎ捨て、創造的な対話で顧客の要求に対峙できるのは、 多様な顧客要求に応え得る先端技術と深い知見、さらには背後で支える体制があるから です。自らの技術力や製品力に自信があるなら、ちょっと調べれば分かるようなお手盛りの仮説で身を飾る必要はありません。相手がどれほど深い迷いを打ち明けてこようと、「我々ならこう解決できる」と応答できるバックボーンがあるからです。

情熱と対話へ

仮説思考そのものを否定するわけではありません。しかし、それはアプローチの段階で相手に押し付けることではなく、互いの想いが共鳴した後に、共に未来を描くプロセスで機能するものです。刺さる言葉や、小手先の仮説作りに逃げる必要はありません。貴社の素晴らしい技術・ソリューションと想いに誇りを持ち、大企業・大組織の変革の魂に真っ向からぶつかる「情熱と対話」から始めること。その熱量をダイレクトにキーマンに届けることこそが、強固な顧客基盤を築く険しくも燃える道なのです。